「短編小説」「サクラバクシンオーに名前を覚えてもらっていないクラスメイト概念」
「サクラバクシンオー!」
クラスメイト達が彼女の周りで興奮している。
彼女が所属するトレセン学園はおろか、男女意味り乱れるこの学部においても、短距離No.1ウマ娘である彼女を知らぬものは居ない。
かくいう僕も、彼女の事が好きだ。
(今日も可愛いな……。)
そんな事を考えていると、サクラバクシンオーは僕の席に近づいてきた。
「初めまして!トレセン学園において学級委員長を務めております、サクラバクシンオーです! よろしくお願いしますね!」
元気な挨拶をされたので僕も軽く会釈する。
(あれ、僕の名前覚えられていない?)
そんな事お構いなしにサクラバクシンオーは目を輝かせながら口を開いた。
「 あなたのお名前はなんですか!」
僕は絶望のあまり固まった。
クラスメイトが僕に目配せしては哀れみの眼差しを向ける。ちくしょう。僕は震える声で自分の名前を伝えた。
「えっと……佐藤です……。」
「サトちゃんですね? 分かりました!」
サクラバクシンオーは笑顔のまま僕の手を握りしめた。
「これから仲良くしましょうね! サトちゃん!」
僕は泣いた。
完